ラブレターに断りの手紙を書く【女性向け恋愛コーチング11話】

前回のお話:婚活情報を集める【女性向け恋愛コーチング10話】

夢子の夕食

図書館を出て夕食用にチラシ寿司を買ってまっすぐ自分の部屋に戻った夢子はポストに手紙が入っている事に気が付いた。

ピンクのハートマークをしたシールが張ってあってこれなら誰が見てもラブレターをだと分かる外見だった。

ラブレター

先日そっけなく先に帰って置いてきぼりを食らわせた鈴木からだった。

今日は日曜日で郵便配達は来ない筈だし、切手も貼っていなかったし、そもそも住所すら書いていない封筒であるから、きっと進次郎が自分で持ってきたのか、鈴木が進次郎から住所を聞き出して自分で持ってきたんだろうと思った。

「うざっ!」

連絡先も教えずにその日のうちにスマホは着信拒否にしてメールも受信しないように設定したので、たぶん連絡を取ろうと思っても取れないので、ラブレターを書いて直接持ってきたのだろう。

夢子にとって正直迷惑だった、今日はAI(人工知能)結婚相談所でそれなりの手応えを掴んだし、図書館で集めた婚活情報も婚活に向けて期待をもたせてくれる内容だったからだ。

冴えないバツイチ中年サラリーマンの顔など食事時に思い出したくも無かったので、そのままゴミ箱に入れてしまおうかと思ったが、自分がラブレターを書くときの参考になるかもしれないと思い直して読んで見る事にした。

チラシ寿司をひとくち食べてストレートを口に含んでゆっくりと封を開けると、まるで小学生が書いたような幼稚な字がピンクの便箋を埋めていた。

夢子様

とつぜんラブレターを送りつけるという厚かましい行為をお許し下さい。

先日はお付き合い頂きましてありがとうございました。

連絡先を伺うことが出来なくて進次郎君を通じて連絡を取ろうともしたのですが、全く連絡が取れないという事で、たいへん厚かましいと思いつつ、この手紙を書いてご自宅を知っている進次郎くんに届けてもらう事にさせていただきました。

単刀直入に書きますが、もう一度だけ会って話をさせて貰えないでしょうか?

それだけど伝えたくて生まれて初めてラブレターを書きましたが少しだけ自己紹介をさせて頂ければと思います。

ゴミ箱

そこまで読んだ夢子はチラシ寿司を包んでいた包装紙と一緒に丸めてゴミ箱に投げ入れた。

少しだけ自己紹介と書き出した後には延々と生い立ちから自分の歴史を書き連ねてあるようで、最後の便箋6枚目に目を落とすと自分の近況について書いてあったから、自分の事を延々と書いてあったに違いなかった。

きっと数時間かけてラブレターを書いたのだろうが、文章量が多すぎて読むのに時間がかかって相手も困るという事は考えないのだろうかと思った。

残り少なくなっていたグラスを琥珀色の液体でもう一度満たすことにした。

グラスを空にしてチラシ寿司を食べ終えた夢子はバスタブにお湯を張って体を沈めて鈴木と今後のことを考えることにした。

入浴中

「やっぱ元彼になんて会うんじゃなかった!」

進次郎だったらしつこくつきまとう可能性は低いと思われたが、鈴木という男に関してはどんな性格なのか分からなかった。

あの長々とした手紙をかくのだから執念深い男なのかもしれないと思った。

夢子はバスタブの中で昔聞いたゲーテが書いたラブレターの話を思い出していた。

かの文豪ゲーテがラブレターを出した相手はシャルロッテは人妻でお菓子メーカーのロッテの語源になった女の人だ。

ゲーテは1年以上の長きに渡って毎日毎日シャルロッテにラブレターを書いて、トータルで千通以上のラブレターを書いて送りつけたけれど、結局恋は実らなかったのだそうだが、ラブレターを毎日書くことで筆力が上がってゲーテが文豪にまで成長したという話だったが、本当の話なのか、あとから創作された話なのか真実はわからないと思う。

さて問題は鈴木からのラブレターである。

ゴミ箱に投げ入れてみたものの、このまま放置してしまうとゲーテがシャルロッテに送ったように、いつまでもしつこくアクションを起こしてくるかもしれないので、何かしらの方法で完了にしなくてはとお湯に浸かりながら考えた。

自分から進次郎に連絡を入れるのも、電話やメールを着信拒否や受信拒否設定しているに気が付いている筈だし、それらを解除してこちらからメールで断りを入れるのはしたくなかった。

いろいろ考えた挙げ句、夢子はラブレターのお断りの手紙を書いて送ることにした。

風呂上がりの夢子

バスルームから出た夢子は体にバスタオルを巻いただけの格好で机の引き出しから便箋を取り出すとボールペンを手にした。

鈴木様

お手紙ありがとうございました。

せっかくですが私は誰とも結婚する気はありません。

と書いてみたものの進次郎からの誘いに乗って食事に出ていったわけだし、もう一枚便箋を取り出して改めて書き出した。

鈴木様

ご丁寧なラブレターありがとうございました。

せっかくなのですが私のことは忘れて下さい。

夢子

インターネットを探せばラブレターに対する断りの手紙の書き方だとか雛形などの参考文例が有るとは思ったが、そこまで手間をかける気はなかったし、余計なことは一切書かないで意思表示だけはっきり伝わるほうが良いと思った。

書き終わった夢子は封筒に入れて宛先を書く段階で有ることに気が付いた。

「どっちの住所も知らないんだっけ?」

鈴木の住所は聞いていないし進次郎も結婚して引っ越した転居先は聞いてなかった。

どうするかは明日考えることにしてベットに入って眠ることにした。

眠る前にお気に入りのレコードを取り出して針を落とした。

レコード

スピーカーから二代目広沢虎造の石松三十石船が流れてきて夢子は起き上がった!

夢子の心に突然ある疑問が湧き上がったのだった。

このページのAI朗読(字幕付き)

次回:婚活戦略を立てる【女性向け恋愛コーチング12話】