AI(人工知能)結婚相談所【女性向け恋愛コーチング9話】

前回のお話:シンクロニシティと元彼との再会【女性向け恋愛コーチング8話】

婚活セミナーに出席してから一週間経過したが入会審査の結果は未だ届いていなかった。

夢子はもう一度ポストを確認したが何も入っていなかった。

お昼近くになって空腹を感じてきたので、何か食べようと繁華街に向かって歩き出した夢子の視界に不思議なポスターが目に飛び込んできた。

AIによる結婚相談所

「AI(人工知能)で結婚相手を探します? たそがれ結婚相談所?」

まるで魔法のように忽然と目の前に現れた案内に引き寄せられるように、相談無料のプレートが張ってあるドアを開けて中に入っていった。

「いらっしゃいませ」結婚相談所相談員

落ち着いた感じがする男性が夢子を出迎えてくれた。

ポスターを目にして突き動かされるように中に入った夢子はなんと切り出して良いのか分からなかったので軽く会釈した。

「こちらはAIを活用してマッチングを行う結婚相談所です、もしよろしければ15分ほどで簡単にシステムを紹介させていただきますが?」

言われるまま席についた夢子はに対して出迎えた男性が説明を始めた。

「当社は30年前より結婚相談所を関東を中心に展開してまいりまして、長年のマッチングノウハウを人工知能研究のベンチャー企業と提携することで、人力や相談員の経験に頼っていたマッチングをAIに置き換える事に成功いたしました。」

とても穏やかな口調で説明が始まった。

AIを導入することによりマッチングが瞬時に行われ、可能性の低い相手は最初から除外することが可能になったので、入会者が無駄な時間を浪費する事がなくなった事。

AIには深層心理の学位を持っている学者の知識も導入されているので、よりベストなマッチングが可能になったことや、原則半径50キロ圏内の候補の中からもれなくピックアップするので、より希望に近いお相手を探し出すことが可能になったといった説明だった。

「当事務所から半径50キロ以内に約300名の男性会員様が登録されていらっしゃいます、もし良かったら人工知能の質問に答えて頂いて、お客様の希望にマッチする結婚相手の候補がどのくらい登録されているのか直ぐに分かりますが試してみますか?

何か個人情報を特定できるような事をお伺いする事も有りませんし、人工知能研究のベンチャー企業が開発した音声認識技術を使いますので、何か用紙にご記入頂くような面倒な作業も必要ありません。

音声の質問に音声で答えていただくだけで結構です。」

無料ということを確認して夢子はモニターの前に座ってヘッドセットを装着した。

ヘッドセット

左右の耳に合成音声らしい女性の声が流れてきた。

まず貴女の性別と年齢を教えて下さい。

「女性、42歳」

女性の方で42歳ですね。

結婚相手として希望する男性の年齢について教えて下さい。

自分が女性だと名乗った事から結婚相手の男性について聞いてきたのは流石にAIを使っているだけの事があると感心しながら質問に答えた。

「上は3つ年上くらいまでで年下なら5歳くらいまでです。」

3歳年上から5歳年下までがご希望ですね。

貴女が結婚したいと思う相手を芸能人から選ぶとしたら誰ですか?

そんな感じでAIによる質問がスタートして、質問内容は希望する収入や専業主婦になりたいのかや、子供は何人くらい欲しいか、自分の兄弟の数、血液型、料理や洗濯などの家事をするのは好きか?好きな音楽のジャンルや最近見た映画などとても沢山の質問に答えていったが、これを紙に自分で記入するのであれば面倒になって途中で適当になっていただろう。

最後の質問です、結婚相手に望むことを出来るだけ具体的に思いつく限り話して下さい。

夢子を出迎えてくれた男性は姿を消していて部屋にはヘッドセットを付けた夢子だけの状態で、たぶん別室で答えている内容をモニターしているのだろうと思ったが、どうせならという事で思いつくまま結婚相手に望むことを口にした。

「優しい人じゃないと絶対に嫌です、それから自分より背が低い人もできれば避けたいですし、両親と同居しないと言っても近くに住んでいるよりも離れた田舎に両親がいるほうが良いです、それから家事を手伝ってくれて子供が好きで、スポーツマンで・・・・」

話しながら人工知能を長年研究しているベンチャー企業の技術で作ったAIでも、ここまで夢子の話すことを理解して相手を探すことは無理なのではないかと思ったが、せっかくなので相手への希望を全て話して最後に以上ですと言った。

お疲れ様でした、お話していただいた結婚相手へのご希望を確認させて頂きました。

10分ほどで結果をお出ししますので少しお待ち下さい。

夢子は急に空腹を覚えた。

先程の男性がコーヒーを持ってきてくれたので、ビスケットを口にしてコーヒーで流し込んだ。

空きっ腹にビスケットは染み渡るほど美味しかった。

夢子がビスケットを食べてコーヒーを飲む間、男性は奥に引っ込みコーヒーを飲み干した頃合いで一枚の紙を持って再び現れた。

「おまたせしました、さきほどAIにお答えいただきました結婚相手への条件から当結婚相談所に登録されている男性会員を検索いたしました結果でございます。」

結婚マッチング結果

マッチング結果3名と書かれた紙には42歳銀行員 年収900万円、39歳地方公務員 年収500万円、41歳会社経営 年収1200万円と、どうやら夢子の希望に叶う相手は300人中3人という事で丁度1%だった。

コンピューターにあまり詳しくない夢子はAIとはどんな代物なのかよくわからないままに、結婚希望者の100人に一人は自分の希望を満たしてくれるだけのスペックを備えているという事がわかって少し安心した。

「お客様このままお帰りいただいて構いませんが、よろしければご入会の案内をさせていただきたいと思いますがいかが致しますか?」

説明によると女性は入会金1万円で男性の入会金は30万円、毎月の会費は女性が3千円で男性は毎月2万円、月一回のペースで相談所が主催するお見合いパーティーと、AIによるマッチングで導き出されたお互いが合意した場合、一対一のお見合いが案内され男性はお見合い1回毎にお見合い費用として2万円、女性は無料という事でお見合いパーティーの参加費用も女性は無料で男性は1万円だった。

入会に際しては以下のものが必要という事だった。

  1. 住民症の写し(世帯全員)
  2. 実印
  3. 印鑑証明書
  4. 収入証明書(源泉徴収書)働いている場合
  5. 勤務先の給与明細(直近3ヶ月分)
  6. 写真2枚

男性の場合は上記に加えて最終学歴を証明する卒業証明書が必要であった。

入会を希望する場合は必要書類と入会金1万円を添えて申し込む必要があった。

夢子はパンスレットを受け取るとコーヒーのお礼を言って結婚相談所から外に出た。

朝曇っていた空がキレイな青空に変わっていた。

青空

夢子は壁の穴でスパゲティを食べることにして元気に歩き出した。

AIによる結婚相談所

初老の男性が夢子に説明をしていた男性に聞いた。

「どうだった?いまの娘は入会しそうかい?」

「婚期を逃したことに気が付いて焦っているのがミエミエの感じでしたし、無茶な希望に3人の候補者がいると信じ切ってましたから必ず一週間以内に又やってきますよ・・

いまごろ嬉しくてスキップでもしてるんじゃないですか?」

「まぁ婚期を逃して焦っているのが一番のお客様なんだからしっかり頼むよ、今月もあと男2人、女1人の入会で目標達成だね。

しっかし生身の人間相手の一番AIとかに程遠い商売だと思うけど、現代人は人工知能とかAIっていうだけで万能みたいに考えてしまうんかな?」

「そうですね昔はこんなスペックの高い男がいますっていくら入会前に話しても、半信半疑な人が多かったですけど、AI技術を使った人工知能が導き出しましたって言うだけで、コロッと信じちゃう人が多いのは不思議ですよね?」

初老の男性はニヤリと笑ってパソコンのキーボードを操作しながらこう言った。

「所詮は人が意図したように動作するようにしてあるんだし、そもそも人の心の中まで操作できないのだから、いまのだって娘の希望に叶う相手を検索して表示するだけだからね。

あとは当人同士次第だからね。」

このページのAI朗読(字幕付き)

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