セルフリスペクトは不要【女性向け恋愛コーチング7話】

前回のお話:婚活適正検査の結果【女性向け恋愛コーチング6話】

セルフリスペクトの本

夢子はセルフリスペクトの本をくれた、見るからに女性に縁が無さそうなのに、今度結婚すると言っていた中年男性の冴えない顔を思い出しながら読書に集中しようとしていた。

ただ本をくれた男自身が読んでないわけだから、この本のおかげで結婚相手が見つかったとは言えないわけだし、自己啓発に類する本を読んだことがない夢子は、中々本の世界に入っていくことが出来なかった。

セルフリスペクトとは自分を否定することなく尊重する事らしいのだが、一歩間違うと自惚れになりそうな気がするし、この本をくれた男が見るからにウダツが上がらない風貌だったので、セルフリスペクトが必要だと思った誰かがプレゼントしたんだろうと思った。

夢子は読書を中断していつの間にか昔の自分を思い出していた。

それほど裕福でないまでも中流の家庭で育ち、小学校の成績も中の上といった感じで目立った記憶はないが、劣等感を持つような過去は思い当たらなかった。

小学校中学校とボーイフレンドと言えるほどの親密な男友達はいなかったが、中の良い女子グループと行動をともにしていたので彼氏が欲しいと思ったことはなかったし、自分に劣等感を持つような経験も思い当たらなかった。

小中学校

夢子は過去の記憶を辿る事をやめてミルクティーを飲んでベットに入った。

高校に入学した後の現在までの事を思い出したくなかったからだ。

高校1年生の時に同じ弓道部の一年上の先輩に恋をして思い切ってラブレターを出したが返事は来なかった。

返事が来ないばかりか夢子のラブレターを受け取った先輩は仲間にその事を喋ったらしく、弓道部内を始めとして学校内に夢子がラブレターを出したことが広まっていて、それを知った翌日は学校を休んで一日海を見ていた。

物思いにふける夢子

結局それがトラウマになって高校から大学まで特性の男性と付き合うことは無かった。

口の軽い先輩を憎むことは有っても自己否定した事はなかっが、セルフリスペクト言うところの自己尊重した記憶も無かった。

そもそもセリフリスペクトをしている人として社内で思い浮かぶのは、自己顕示欲が強くて自信過剰で人を押しのけるようなタイプばかりで、どうしてセルフリスペクトをすると恋人が出来るのか夢子には分からなかった。

眠ろうとすればするほど目が冴えて、過去の記憶が蘇ってきた。

ベット

いつの間にか三十代の頃に付き合っていた彼氏のことを思い出していた。

「付き合ったキッカケは一体何だっけ?」

口に出さなくても鮮明に記憶に残っていたのだが、彼氏は夢子の会社にOA機器を納めている商社の営業マンで進次郎といった。

取引先だった彼がキッカケを探し出して声をかけてきたのであって、話しかける切り口になれば何でも良かったのだろうと思うし、新規顧客開拓を普段からやっている営業マンの進次郎にとって、きっかけを作ることは容易いことだったんだろうと思う。

進次郎がが夢子の在籍する営業部にやってきたとき夢子以外の全員が外出していて部屋には夢子しかいなかった。

彼は近く開催される催し物の案内状を手渡して、課長に渡してくれるように頼んだとき、デスクの上にあったクリアファイルの絵柄を目にしていきなり言った。

「進撃の巨人好きなんですか?」

それはたまたまコンビニで休憩時間に食べるスナックを買った時に貰ったもので、テレビで見たことは有ったが別に好きという事でもなかったのだが、咄嗟に夢子の口から出た言葉は思っていることとぜんぜん違う事だった。

「これ面白いですよね?」

そんな会話がキッカケで進次郎が会社に来るたびに何らかの会話を交わすようになって、やがて二人で食事に行ったり、夏休みには二人っきりで二泊三日で東京ドイツ村へ遊びに行った事もあった。

「夢子さん、僕と一緒に暮らさない?」

東京ドイツ村での2日目の夜、ベットの上で唐突にプロポーズされたが暫く返事を待って欲しいと言ったが何週間たっても決断できなくて会うたびに返事を先延ばしした。

やがて進次郎は営業担当区域が変更になって夢子の会社に顔をだすこともなくなって、デートの間隔もメールの頻度も少なくなってきて、決定的な別れにならない状態でやがて疎遠になった。

風の噂では社内の後輩と結婚して今では二児の父親になっているらしい。

過去の自分を振り返ってみたがセルフリスペクトすることが婚活成功につながるという事は相変わらず理解できなかったが、少なくとも自己嫌悪に陥ったり自信をなくしてしまうことが心のブレーキになるとは思ったが、相変わらずどうすれば良いのかは全く分からなかった。

目が冴えてきてしまったのは昔の恋愛体験を思い出したからだと思ったので、眠くなるまでセルフリスペクトの本にもう少しだけ挑戦する事にした。

10分も立たないうちに睡魔がやってきた。

「セリフリスペクトなんて私には必要ない、それは底辺層で自己嫌悪の塊みたいな人にとって必要な考え方で私には関係ない・・。」

朝が来た

目覚ましの音に起こされた夢子はいつもどおりシャワーを浴びてビスケットとミルクティーの簡単な朝食をとると朝の支度に取り掛かった。

身支度が整って出かける前に充電スタンドからスマートフォンと取り外すとメール着信のメッセージが出ていた。

スマホする夢子

メールの送信者は進次郎だった。

唐突にシンクロニシティという言葉が思い浮かんだ。

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